着物には衣紋(えもん)という独特の着こなしポイントがあります。衣紋を大きく取るか、締め切ってしまうかで、同じ着物とは思えないほど印象が変わるものです。
きものは、うまく着こなせば、体型の欠点をカバーして、かえって美しく演出することができる服装です。洋装との最も大きな違いは、最初から体型を補正して着こなすという視点です。
着付けの中でも、「衣紋(えもん)」は特別重要なポイントです。小さな部位にすぎない衣紋の抜きかげん一つで、同じきものが上品にもなりますし、粋に色っぽくもなります。衣紋の少しの違いで後姿の表情には大きな変化が出てきます。
一般的に衣紋の抜き加減を大きくすると、粋になる反面、やりすぎると下品になります。狭くすると、上品になりますが、年齢や雰囲気を外すとあか抜けません。たとえば、背中がのぞくくらいに抜くのは抜きすぎでちょっと下品に。後ろ姿に半えりが太く見えていると、なぜか野暮ったい印象を与えがちです。
粋に、上品に着こなすには、半えりは肩の部分で細く、ほとんど見えないくらいにします。目安としては、前えり合わせめで細めにみえるくらいでしょうか。抜きすぎず、詰めすぎず、首のカーブに沿って自然に抜くのが、上品で魅力的な衣紋の取り方になります。経験も必要な衣紋の抜き加減ですが、着慣れた人に後ろ姿をチェックして貰うことで、自然と自分にあった衣紋抜きができるようになると思います。
衣紋の抜き具合には、着付けの表情を大きく変化させる力があります。見方を変えると、その変化を利用した着付けを心がけると、思うような方向に持ってゆくことができることに気づかされます。
たとえば、フォーマルな装いである留そで。衣紋を普通よりも抜きかげんにすることで、フォーマルらしい重厚さだけでなく、粋さも演出可能です。あるいは、訪問着。晴れ着特有の華やかさを表現するのなら、えりは広めが良いでしょう。そして、衣紋は思い切ってぬき加減に。強調されたうなじは女らしい魅力を演出し、晴れの日にふさわしい装いになります。(抜きすぎにはご注意!)
小粋にきりっと着こなしたい紬(つむぎ)ならば、衣紋は詰め加減が似合います。知的な印象を演出することで、いつもと違った着物の表情を楽しむことができることでしょう。。